今すぐぎゅっと、だきしめて。

その中のひとりに、あたしの視線は釘付けになった。





「……え、うそ……」






なんでいるの?




それは、制服姿の、永瀬真尋の姿だった。



あたしは両手をバンッと窓について
もっとよく見えるように顔を寄せた。





上のコートは私物だってわかる。
だけど、ズボンが絶対制服だ!


初めて見る……。



紺色に、色んなカラフルなラインの入ったマフラーをグルグル巻きにして。
永瀬真尋は、電車に乗り込んできた。





ちょうど、あたしの目の前に……。





ドクン


ドクン





こんなに近くにいるのに……ヒロが遠い……。





ねえ、ヒロ……。



あたしね?

あたし、高校受かったの。


受験、頑張って……あたし、合格したんだ。


ヒロ、喜んでくれる?






ねえ、あたし……





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