今すぐぎゅっと、だきしめて。


プルルルル



その時、出発を告げるベルがホームに響き渡った。




ドクン ドクン ドクン



ヒロは目を伏せていて。
あたしに気づく気配はまったくない。



ヒロ!
ヒロ!


こんなに呼んでるのに……
あたしに気づかない、ヒロ……。



あたりまえだよ。


あの時のヒロじゃない。


あたしの知ってる、ヒロじゃないんだもん。




ドクン

ドクン




プルルルル





でも……

あの時のヒロじゃなくても……!



『ドアが閉まります』



ドクン

ドクン




「……はあっ」




あたしは、電車を飛び降りていた。





そして。

大きく息を吸い込むと
タンッと足を慣らして地面を蹴った。




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