今すぐぎゅっと、だきしめて。
走り出したあたし。
だけど、それはすぐに止められた。
ガシって感じで、誰かに後ろから両腕を掴まれた。
「きゃあああ」
ジタバタと暴れるあたしは、さらにグイッと誰かの胸の中に押し込められた。
上からヒロがあたしを覗き込む。
「なんで逃げんだよ!
てゆか、逃げれるわけないでしょ」
「ご、ごめんなさい!ゆ、許してぇえ」
「は?」
それは。
額に青筋を立てた、永瀬真尋。
さも迷惑そうに、顔をゆがめると。
「離してもいいけど、逃げないって約束出来る?」
その鋭い視線に、思わずビクリと震える。
は、はいって何度も頷きながら、あたしは涙目で訴えた。
なんとか逃げないと納得してくれたヒロは、あたしを解放すると、溜息をつきながらマフラーをとった。
え、え?
これが、ヒロ?
この不機嫌そうな……感情むき出しの人が?
あたしの視線に気づいて、ヒロはその顔を上げた。
わわ!
慌ててフイーって視線を逸らしたあたし。
だけどすぐに身を屈めて顔を覗き込まれた。
ドキンッ!