今すぐぎゅっと、だきしめて。
最後の段を駆け上がったあたしの背中に
届いたその声に……。
ドクン ドクン
信じられない気持ちで
振り返った。
「……」
見下ろした先には、階段に1歩足を踏み入れたヒロの姿。
あたしの顔を見るなり、「あ」って呟いて。
手で口元を覆った。
ちょ……と、待って?
今……
「……今、あたしを呼んだ?」
「…………」
ユルユルと、向き直ると。
あたしは唇を噛み締めた。
「ねえ、今……
あたしの名前……呼んだよね?」
そう言ったあたしの顔に、チラリと視線を上げると。
ヒロは気まずそうに髪をクシャリとすいた。
ドキン
ドキン
あたしは震える体を抑えながら、なんとか階段を下りた。
彼の顔がもっと見たくて……。