今すぐぎゅっと、だきしめて。
だけど。
逃げようとしたあたしの体が、突然宙に浮いた。
わっ!
「誰が、待つかっつーの」
「え?……ちょ……」
な、なんであたしが思ってたことわかったの?
なにが起こったのかもわからずに。
気が付いたらあたしの頬が、ヒロによって挟まれてて。
グイッと上を向かされたかと思ったら。
真っ黒な前髪の隙間から
色素の薄い瞳が、あたしを覗き込んだ。
ドクン
それだけで、金縛りにあったみたいに動けなくなる
。
「……!」
そして……
ヒロはあたしの唇にそっとキスをした。
わわっ!
今までみたいに、反射的に身構える。
だけど。
それは痛くもなんともなくて。
とろけちゃうような
まるで蜜みたいな
甘い甘い口付けだったんだ。