今すぐぎゅっと、だきしめて。
「ほら。 早く乗って?」
「え?」
ヒロはそう言って、あたしの真新しい鞄を抜き取ると、自転車のかごに入れた。
「あ! で、でも……いいよ!あたし、歩いて行くし」
ペダルに足をかけたヒロに、慌てて駆け寄る。
自転車にふ、ふたり乗りなんて……
嬉しいけど、恥ずかしい気持ちのほうが勝ってしまう。
カアアアと頬を火照らせたあたしに、視線だけ送るとヒロはキョトンと首を傾げた。
「なんで?」
えええ?
「なんでって……だって……」
「同じ高校なのに、別々に行く必要ないだろ?
ま、嫌なら別にいいんだけどぉ」
そう言うと、ヒロはさっさとあたしを置いて走り出した。
え?
え、ちょ……ほんとに置いてくの?
どんどん遠ざかるあたしの鞄と、ヒロの背中。
ま……
「待って! 乗るッ。 乗りますッ」