今すぐぎゅっと、だきしめて。
カラカラカラ……
のんびりと歩道を走る、自転車。
ドキン
ドキン
さっきからうるさい心臓の音が、余計にあたしを緊張させていた。
そうなんだ。
あたし、入学式の今日まで
ヒロが同じ学校だって気づかなかった。
ヒロも何も言ってくれなかったし。
ちぃちゃんだって、ニヤニヤするだけで教えてくれなかった。
大樹も奈々子も、こっそり教えてくれたらよかったのに。
そしたら、もっと髪型にも気をつけたかった。
それにメイクだって……。
ヒロの背中をそっと眺めながら、あたしは自分の髪をといた。
今日からあたしとヒロは、同じ高校の1年と3年で、センパイと後輩になるんだ……。
って、ことは。
『永瀬センパイ』とか『真尋センパイ』って呼ばなくちゃダメなのかな……。
カアアア
だ、ダメだ……。
……嬉しい。