今すぐぎゅっと、だきしめて。


花火は、この町の真ん中に流れている川で行われていた。

河川敷はたくさんの人でごった返している。

打ちあがる花火。




そのたびに赤や緑、黄色の光で人々の顔を照らしている。




一瞬で散ってしまう、夜空の花。


……綺麗。




だけど、それは。
なぜか儚くて





「…命……みたいだな」









隣で同じように夜空を見上げていたヒロは、ポツリと呟いた。

ヒロ……。




―――ドォン
―パンパン




見上げた彼の横顔も
夜空に浮かぶ、大輪の花が、幻想的に照らしてる。




この人が、ほんとにユーレイ?


あたしにはそれが信じられないでいた。


確かに、最初は怖かった。

だけど。

今はそんな感情はどこにもない。






―ドォン

――ドドォン




「……あたし、身体、見つけるからね」

「……」



花火の音にかき消されてしまいそうなあたしの言葉に。


ヒロはただ小さく「うん」と頷いた。





< 33 / 334 >

この作品をシェア

pagetop