今すぐぎゅっと、だきしめて。
大きな麦わら帽子をかぶったあたしは、おばあちゃんの手に引かれている。
聞こえるのは
耳をつんざくような蝉の声。
真っ青でどこまでも抜ける夏空。
そして
彼の着ていたTシャツのように真っ白な入道雲。
風に揺れる大きな向日葵の花。
それに合わせて音を奏でる、風鈴の涼しげな音。
目の前の緑の屋根の家。
そこには、嬉しそうにはしゃぐ犬と
真っ黒な髪の男の子が
楽しそうに
バスケのボールを追いかけてる。
ホースからの水しぶきが
七色の虹をつくっていて
すごく
すごく
胸に焼き付いた。
『…あ!ごめんね、濡れちゃったよね?大丈夫?』
優しい声。
男の子は、慌ててあたしにかけよるとタオルを差し出した。
『だ!大丈夫ッ。とっても暑かったら涼しくなったもん。ね、おばあちゃん』
『ん? ああ、そーだねぇ。 気持ちいね』
真っ赤に染まる頬。
あたしは彼に負けず劣らず慌てふためくと、タオルと押し返した。
『…………っはは! おかしなヤツ』
その笑顔が、眩しくて。
目が逸らせなかったんだよ……?
だけどこの思い出はまだ秘密。
ヒロが、もっとあたしに夢中になって。
あたししか見えなくなったら。
あたしに、自信がついたら。
その時に、話してあげるね?