今すぐぎゅっと、だきしめて。
満開の桜の間から
空を見上げた。
穏やかな綿菓子の雲が、風にのって流れてる。
「おばあちゃん、見ててね?」
そうつぶやいたあたしの頬を
桜の花びらが
優しくかすめた。
まるで……。
おばあちゃんが微笑んだような気がした。
季節は巡り、また夏が来る。
でも……。
あの夏は、
もう二度とやってこない。
ふいによみがえるその情景に
胸の奥が締め付けられた。
ここから新しい生活がスタートする。
いきなり大変だなって思ったけど、ヒロが言ってたみたいに
ここを卒業する時は、『よかった』って思えるように
必死になろう。
精一杯楽しく生きよう。
この人と一緒に。
真尋と一緒に。
fin.