今すぐぎゅっと、だきしめて。


「すごかったなぁ~。 とくにフィナーレの連続花火! 俺マジ泣きそうだった」

「信吾は大袈裟だよ。 まぁ、綺麗だったし。それにこれがみんな集まる最後のお祭りだからね」

「…………」



最近の奈々子は「最後」と言う言葉をよく言う。



最後と言っても、みんな地元を離れるわけじゃないし。
会おうと思えばいつでも会えるのに。


高校生になったって。
あたし達はこのままなのに。



あたし達は、近くの公園で花火をすることにした。


みんなでお金出し合って、たくさんの花火を買った。


なぜかその頃には、いくつかのカップルが出来ていて。
あたしと奈々子、それから大樹の三人は手元でチカチカ光る線香花火をジッと見つめていた。


「…美加ってば、信吾が好きだったなんて……」



奈々子がブランコに座っている二つの人影を眺めながら言った。

なんだかイイ雰囲気だし。

ベンチの方にもなにやらいい感じの二人が。



「…………」



好きな、人……か。




あたしは目の前に腰を下ろす奈々子を見た。



線香花火のオレンジの光に照らされて、奈々子の顔はとても綺麗だ。


目の上で揃えられた前髪。
こんな陽射しの強い夏でも、いつでも抜けるように白い肌。

大きくてちょっとだけ釣りあがった意思の強い瞳。

ぷっくりと熟れた果実のような唇。


浴衣の襟元から覗く、胸の膨らみ。



同じ年なのに、奈々子はまるで大人の女の人のようだ。



いつもうらやましいと思ってた。






ジッと手元を見つめる奈々子。


今、何思ってる事当てようか?

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