今すぐぎゅっと、だきしめて。


でも、そこであたしの意識は現実に引き戻された。

目の前には、見覚えのある天井。




「はあ…はぁ……はぁ……」




なんだったんだろう……

―――今の。



でも、あの人―――……?








「……ユイ?」 



その声に視線を落とすと。
心配そうにあたしの顔を覗き込むヒロがいて。

あたしと目が合うと安心したように目尻を下げて笑みを零した。


「よかった……大丈夫?」


長い前髪が、小首を少し傾げたヒロの動きに合わせてふわりと揺れた。


でも、みるみるうちにその表情が強張っていく。



「……もしかして……何かわかった?」



あたしの隣に腰をおろしながら、まあるい瞳をさらに見開いたヒロが、息を呑むのがわかった。


目を覚ましたあたしの頬には、幾つもの涙の痕があった。
いつのまに泣いちゃってたんだろう……



「……」

「……」



重たいカラダ。


あたしはそれを無理矢理起こした。



痛い……
頭、痛い……






あたしはヒロと向き合うように座ると、その瞳を真っ直ぐに見つめた。


薄暗い部屋の中。

窓から射し込む月明かりで、その色を少しだけブルーに染めた。


真っ黒なヒロの髪。
だけど、なぜかそれはほんのり光って見える。

淡いブラウンの瞳の中にあたしの顔が映りこんでいて。
今にも溶け込んでしまいそうだった。






「ヒロ…… 
あたしね、ヒロのお母さんに会ったよ」





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