今すぐぎゅっと、だきしめて。

ヒロが行ってしまってどれだけたったんだろう。

きっと、ものの5分程度なんだろう。
だけど、今のあたしにはもう何時間も待っているような気にさえなってしまっていた。



……ヒロぉ、早く戻って来てよーっ

もしかして、ヒロの家じゃなかったのかな?
それで、ガッカリして帰っちゃったとか?
なんでもいいから、なんか言ってきてよぉ!



あたしは落ち着けるはずがなく、ウロウロ玄関の前を行ったり来たりを繰り返していた。



その時だった―――




急に玄関のガラス戸が開いたのは。




ガラッ


「……どなた?」



中から顔を出したのは……

あたしが、昨日見たあの女の人だった。

あの記憶とまったく同じ。
痩せた体、大きな瞳に少しこけた青白い頬。
 
長い黒髪を一つに束ねた彼女は玄関から顔だけだして首を捻った。



う、嘘……

まさか本人が出てくるなんて!



何を言わず、固まってるあたしを見て、その人は目を細めた。



「うちに御用ですか?」

「…え? …………あ! あの…えと……」


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