今すぐぎゅっと、だきしめて。

あたしが少し唇と尖らせて言うと「はあー」と大袈裟な程のため息をついて、ヒロは髪をくしゃっと混ぜた。



……な、なによ。
あたしだって……

ヒロの事もっと知りたいんだもん。


……色んなヒロを知りたいって……
思ったんだもん。




「……」

「お待たせぇ。 これ昨日頂いたものなんだけど……あたしと主人だけだし。二人とも甘い物は苦手だから…」


困ったように眉を下げて笑ったヒロのお母さんは、そう言って麦茶の入った淡いブルーのグラスと、色んなフルーツがのったタルトケーキをあたしの前に置いた。


「美味しそう! いただきます!」


両手をパチンと合わせたあたしを見て、ヒロのお母さんはまた首を少し傾げて嬉しそうに目を細めた。



……ドキン


うう。

ダメだ……


なーんかさっきから
この笑顔に弱いんだよなあ……


あたしは、性懲りもなく熱くなる頬を押さえた。




「それで…ユイちゃんはヒロの学校のお友達なの?」

「……えッ うっ! ゴホッゴホッッ」



突然の質問に、口に入れていた麦茶は吹き出そうになってなんとかそれを喉へ押し込んだ。



「大丈夫?」と慌ててティッシュを手渡してくれたヒロのお母さん。



……ど……どうしよう!!


今日ここへ来てわかったんだ。
ヒロは確かに年上で、17歳だって事。


だから、あたしとは学校が一緒って事はありえない!!


なんて言えば、怪しまれない!?



「…………あ…あの……」


口の中でモゴモゴ答えるあたしの顔をジッと見つめるお母さん。


…………尋問だッ!!!!


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