今すぐぎゅっと、だきしめて。
入道雲と涙
やけに重たい自転車を引きながら、あたしは少しだけ傾いた太陽を見上げた。
ヒロの家を後にして、あたし達はある場所へと向かっていた。
何かわかるかもしれないと、ヒロが事故をした場所を教えてもらったんだ。
だけど…
何か引っかかる……
あたしは、ヒロの家にいる時から違和感を感じてしかたなかった。
「…………」
『どうした?』
ぼんやりしていたあたしの視界に、ヒロの不思議そうな顔が飛び込んできた。
それを伝えようか……
でも、そんなのおかしいもん。
あたしは、しばらく考えて、その言葉を口にした。
「……うん。 ちょっとね? さっきさ…ヒロの家に行ったじゃない?」
『うん。 それがどうかした?』
立ち止まったあたしの前に回りこんで、ヒロは首を傾げた。
ヒロの家……
ヒロの家には……
「お仏壇……なかったよね?」
ヒロも思い返すように宙を仰ぎながらポツリと呟く。
『……うん』
そうなんだ…。
曖昧だった記憶を言葉にして、はっきりわかった。
ヒロの家には、お仏壇もなければ、死んだはずにヒロの遺影すらなかった。
いくら、お母さんがヒロの死を受け入れていないとしても……
もうヒロがいなくなってから2週間はたってるんだし。
……おかしいもん。