今すぐぎゅっと、だきしめて。
鼓膜を震わすブレーキ音の後に、
何かにぶつかる鈍い音。
ああ……
ダメだった
間に合わなかった……
とっさに耳を塞いでいた手の力を緩めると、真っ青な空しか映さなかったあたしの瞳は何かを捉えた。
「…………」
――――……嘘
変形した自転車。
その向こう側に、誰か倒れてる。
広がる鮮明な赤。
それはあっという間に、あたしのいる場所へ届く。
ヤダ
なに、これ……
こんなの……
こんなの知りたいんじゃない!!!
それが
ヒロの事故の瞬間だった。