今すぐぎゅっと、だきしめて。
あたしが何を見たのか、きっとわかったんだ。
ヒロはそんなあたしを見つめながら、困ったように笑った。
『なんで、ユイが泣くんだよ……事故ったのは俺なんだし、ユイが悲しむ必要ないのに』
『変なとこ見られちゃったんだなぁ』なんて少しだけ首を傾げて
眉を下げて笑うヒロ。
ヒロも、事故した記憶……
戻ったんだ。
なんとか立ち上がったあたしを見ていたヒロは安心したように頬を緩めると、不意に顔を上げた。
見上げた空は
“あの日”と同じくらい
高くて、青くて……
哀しいくらい真っ白な入道雲が
あたし達を見下ろしていた。
『……ここが、俺の最期の場所なんだな』
そう呟いたヒロの言葉は
穏やかな夏の風が
雲の向こうまで連れ去ってしまった
辛いはずなのに…
泣きたいくらい 悔しいはずなのに
それでもヒロはあたしに笑ってくれた。
胸が
潰れてしまいそうだった
彼は
本当にここで死んだんだろうか……
風にたなびく黒髪も、真っ白な入道雲とお揃いのTシャツも。
なにもかも
まるで生きてるみたいなのに。