今すぐぎゅっと、だきしめて。


ヒロの未練ってなに?


バスケ……もっとしたかったとか?

お母さんに、きちんと挨拶したいとか?


……それとも、やっぱり生きたい。 とか?



そうだよ。

未練なんて、言うだけキリがない。

生きていたら、なんでもやれる可能性がある。
だけど、死んでしまって
この世から消えてしまったら……


それもなくなってしまうのだから。



俄かに部屋の中が暗くなった。
きっと月が雲に隠れたんだ。


真っ暗な部屋の中で
ヒロの体だけが、ぼんやり光って見えた。



……キレイ


ヒロはキレイだ。



少しの沈黙のあと
また月が部屋を照らして



実体のないその体も


淡いピンクの輝きが
月のブルーと重なって


ほんとにキレイ……




ヒロは優しく瞳を細め
少しだけ首を傾げて

言った。






『……俺の未練は
この手で、この体で……

ユイを抱きしめたい


ただ、それだけ』




「…………」







…………え?




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