今すぐぎゅっと、だきしめて。
「……これ」
『………ユイ、これにキスして』
「え?」
……キス?
首を捻ったあたしを見て、ヒロは面白そうに言った。
『そう。俺の最期を見ていた、この花。 こいつにユイの力を入れてくれたら
俺は成仏できる。 手で触るだけでもいいんだけど……ユイの場合、唇が一番霊力を持ってるみたいだから』
「……そうなんだ」
だから、キスじゃないといけなかったんだ。
だから、昼間…この花に手で触れたとき映像と音が食い違ってたんだ。
『……ユイ。 ありがとうな。 身体探しなんかつき合わせて』
「……うん」
『迷惑だったろ?怖い思いもしたもんな』
「……うん」
『でも、言っとくけど。 俺がいるおかげで変な霊が寄ってこなかったのも確かだからな』
「……うん」
『……うんうんってお前……俺の話ちゃんと聞いてる?』
「……うん」
窓に寄りかかっていた体を起こすと、ヒロは大きな溜息を一つ零した。
『……これが最後なんだぜ?』
……最後?
あたしは、ヒロの手の中で大切に握られてる小さな花を見つめた。