今すぐぎゅっと、だきしめて。
差し出される手。
あたしは、そっと顔を寄せる。
この花に、キスをしてしまったら最後。
ヒロは消えてしまう。
この世から完全に形がなくなってしまうんだ。
うんん。
目の前のヒロは居なくなっても
あたしの心の中にはヒロが居続ける。
いつものように笑って
「ユイ!」ってあたしを呼ぶんだ。
太陽のような笑顔で
視界が滲んで
しっかりと花が見えない。
どうしよう……
どうしよう、あたし…………
ヒロに逝ってほしくないって……そう思ってるの?
だけど
そんなのはあたしワガママだよ。
だから……ダメ。
これ以上、ヒロがあたしの傍にいたら
あたしきっと、ヒロと離れたくなくなっちゃう!
「……ヒロ、元気で……ね?」
あたしは、ヒロを見上げてにっこり微笑んだ。
最後くらい、最高の笑顔を見せたい。
あたしだって、こんな風に笑えるんだよって
ヒロに知ってほしい。
『……ああ』
ヒロは静かにそう言うと、穏やかに微笑んだ。
ありがとう……ヒロ。
退屈な夏休みが、かけがえのない夏に変わったよ?
そして、あたしはゆっくりと口付けをした。