今すぐぎゅっと、だきしめて。
『それで……俺をここに呼んだのはユイなの?』
「え、あたしが?」
『呼ばれてないなら、俺がここにいる必要ないだろ?』
“永瀬ヒロ”と名乗ったユーレイは、相変わらず部屋の隅から動いてはいない。
試すような口ぶりであたしの顔を覗き込むもんだから、慌てて視線をそらした。
あ、あれ?
見えた先は、鏡。
ヒロの顔と後ろの鏡を交互に見た。
……映ってない。
ひええええっ!
「み、未練があって成仏出来ない…とか」
ゴニョゴニョと言うあたしの声がはっきり聞こえたように、彼は顔を上げて眉間にシワを寄せた。
『…未練…』
「……」
そう言って。
少し黙り込む、目の前のユーレイ。
なんでもいいけど…あたしには関係ないよね?
『俺がここへ来る前』
「へ?」
『そうだ…ここへ来る前に……知らない場所にいた。 真っ暗で何も見えなくて。 ただ自分の身体だけが見えてた』
「はぁ」
『……もし、生きてる時の事がなにかわかれば……』
そう言って、彼は真っ直ぐにあたしをとらえた。
その瞬間、さっきみたいな金縛りが身体を襲う。
……や、やめて。