今すぐぎゅっと、だきしめて。

「ユイ? さっきから何一人でしゃべってんの?」

「へっ!?」


今まで後ろを振り返り、楽しそうに大樹達と話をしてた奈々子が、いつの間にかあたしの顔を心配そうに覗き込んでいた。


「大丈夫?」


サラサラの黒髪が、さらに顔を近づけた奈々子の肩から滑り落ちた。


「なッ! なな、なんでもないよッ」

「……あやしい」


潤んだ瞳を知られないように、慌てて顔を横に振ってみる。
でも、奈々子は目を細めたまま、その視線を離してくれなかった。

あたしを見つめたまま、奈々子は首を捻る。



「最近、ちょっとおかしいと思ってたんだよね。 もしかして……」

「えっ!!?」


まま、まさか……ヒロの事…バレてるッ!?


なぜか、事情聴取されてるみたいで心臓は勝手に加速をはじめた。



ドキン ドキン



奈々子の大きくてバッチリメイクのしてある瞳の中に、しっかりとあたしが映りこんでる。


それはそれは、可愛そうなくらい泣きそうな顔をしてて。


無理矢理引き上げてる唇が、ピクピク引きつってた。


「もしかして、ユイ……」


ジリジリ詰め寄られ、あたしは何故か無意識に同じように後退り。


別に悪い事してるわけじゃないし、隠してたわけでもない。
でも、それを言って怖がらせる事もないし。
それに、奈々子は絶対に反対するに決まってる。


“早くお払いしてもらいなさいッ!!”……って。


まだ迫ってくる奈々子から目を逸らせないまま、あたしの背中は窓に当たってそれ以上逃げれない事を伝えてきた。

反射的にキュッと目を瞑る。





「……好きな人出きた?」

「……」



は?


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