今すぐぎゅっと、だきしめて。

まずは、ロビーで全体の挨拶が行われた。


先生から、この合宿での注意事項と日程。
それから抱負。

『健全な精神と身体』

デカデカと大きな文字でしおりの一ページめにそう記されていた。



「いいかぁー、今日はこれからオリエンテーリングで各自選択しているコースに参加。
晩飯を食ったら、夜は肝試し大会するからなー」



米山がしおりを片手に、声を張り上げた。


……ここ、静かなんだから、もう少し声抑えてくんないかな……。



まるで、グランドのど真ん中にいるみたいに、お腹から声を出す米山をジトッと睨むと、あたしはしおりに目を落とした。



「ヌフフ……肝試し……ちょー楽しみ」


すぐ隣りから、恐ろしい声が聞こえ、思わずあたしの体はビクリと跳ねた。
顔を上げると、同じタイミングで奈々子も顔を上げた。


「ユイ……この旅館の後ろ……少し行くと、実は海があるんだって。
そこに洞窟があってね?そこまで行って帰ってくるみたい。 しかも、男女一組で」

「へ…へぇ……」


お、恐ろしすぎる……


夏と言えば肝試しって感覚がおかしいのよっ!


「……その洞窟ね?」

「――ゴクン」


どど、洞窟……!?


奈々子は引きつるあたしにジリジリ詰め寄る。

その真っ赤に熟れた唇が、妖艶に光った。

あたしはその顔を見つめたまま何度も瞬きを繰り返し、みるみるうちに乾燥していく口の中の水分を、無理矢理喉へと送り込んだ。



そして、奈々子は搾り出すような声で囁いた。



「出るんだって……ユーレイが……」

「きゃあああぁぁぁああッ!!!!!」






ヒィィィィイィイッッ!!!!


無理ッ 無理ッ 無理だからぁああッ!!!?



助けてーーーーッ!!!


帰してーーーーッ!!!!




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