今すぐぎゅっと、だきしめて。

獣道を、一歩踏み出したところで、あたしはその足を止めた。



「……」



ちょ…
ちょっと、待ってよ?



いくらなんでも、この真っ暗で物騒な山道を、か弱い乙女一人で行かせる気じゃないよね!?

そうだよ!
確か、男女一組って奈々子も言ってたし。


じゃ、じゃあ…あたしにもペアがいる訳だよねッ?

誰だよぉー…



「ね、ねえ、榎本…あたしのペアって……」



そう言って振り返った瞬間、真後ろにいた何かにあたしは顔からぶつかってしまった。



「…ブッ!」



思い切りそれにぶつかり、あたしはバランスを崩す。


わわッ
転んじゃう!?


そう思った次の瞬間、あたしの腕は強い力で引き寄せた。





…………。


「あたたた……」


赤くなった鼻をさすりながら、顔を上げた。


ん?


目の前には、かわいい蛙のマスコットキーホルダー。


……これ、どっかで?


……。



「あーーーッ!!!」





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