夜一を見たらわかること

問いかけられた言葉に、返答する間もなく、急に夜一の顔があたしにぶつかるみたいに寄った。

「んっ……」

急に、自分の声かと疑いたくなるような声が漏れた。

呼吸でさえするのを忘れてしまう程突然で。

思わず目をつむってしまったのは、驚いたからだと思う。

離れると「キスって簡単でしょ?」と夜一が言った。

「えっ?」

「顔、真っ赤だけど」

耳元でそう囁くけど、頭が理解出来なかった。

「夜一?」

「彼氏、戻ってくるよ?」

「えっ?」

「バレたら大変だね」

軽く微笑すると、夜一は駅の方へと足を向けた。
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