夜一を見たらわかること
sketch
「お前、昨日なんで電話でねーんだよ」
下駄箱で上靴に履き替えていると、頭上から章吾の不満声が降りかかる。
「わり。
昨日、寝ちゃってさ」
「まじかよ?
だって電話したの20時だぞ?
夕方、メールしたのに返事も寄こさねーし」
「眠かったんだって。
わりぃ」
両手をあわせて謝るけど、章吾はまだ怒った顔のまま。
またやってしまった、と思った。
あたしはちょっと、電話もメールも苦手なタイプ。章吾は結構マメなタイプ。
おはようとかおやすみとか送ってくるけど、そっかぁと見て納得してしまい、ついつい返事を忘れてしまう。
それを祢音に言ったら愛されてる証拠っていうけど。気をつけないと愛想つかされるかも。
「返事くらいしろよ。
絵文字なくてもいいから」
「はいはーい」
だけど、ちょっと思うんだ。気が乗らないことでも、それを章吾にあわせなきゃいけないのかって。
好きだけど歩み寄るのが難しいとこもあるんだって最近やっと気付いてきた。
「罰として、今日一緒帰るぞ?」
「えーっ?
部活あんだろ?」
「だから罰なんだよ」
べッと舌を出しやがった。真似してあたしも舌を出す。でもこういう関係はやっぱり好き。章吾といると楽しいし。