夜一を見たらわかること
「つうか、そういう夜一は、部活やってんのか?」
「部活?やってないよ」
「へー……じゃあ絵は?」
「はい?」
「まだ、絵描いてんのか?」
「絵?」
「絵、好きだったろ?」
「そう言えばそうだったかも」
「ほら、将来画家になりたいって言ってたじゃん?」
「よく覚えてるね」
「覚えてるよ。
将来の夢の作文」
「まあ、昔の話」
はっきりそう言った。
だけど、どうして?と理由は訊けなかった。
「描けばいいのに。勿体ねー」
「そう?」
「おう。勿体ねーよ。
絵、やればいいのに」
絵を描いていないと知ると、少し寂しい気持ちになった。
あの日の夜一の顔が未だに忘れられないから。
それがすごくショックだった。
気がつけば、夜一の手の平があたしの頬に触れたかと思うと、滑るように顎先へと移動していた。
そのまま軽く顔を上へ向けさせられた。
瞼を反射的にギュッと閉じてしまう。