夜一を見たらわかること

だけど、何も触れてはこなかった。

目を開けると、夜一は目を閉じる前と同じ位置にいて、ただあたしを見下ろしていただけだった。

「今、キスして欲しかったの?」

「はっ?」

「目なんか閉じるから」

「ん……んなわけねーだろっ」

「顔あげただけで、目を閉じるなんてお手を覚えた犬みたいだね」

「はああっ?馬鹿にすんなよ?」

頭にくるけど、確かに犬みたいだと思った。顔が熱くなるのが怒りの所為か、恥ずかしさの所為か分からなくなる。

夜一は口元だけ、また笑う。

「濱田さんの絵なら描いてもいいかも」

「えっ?」

「今の顔が面白かったから」

「はっ?」

「今みたいな恥ずかしい顔、彼氏にも見せた?」

「あっ?は…恥ずかしい顔なんかしてねーよ」

「彼氏とキス出来た?」

「そ……そ……そんなこと言う必要ねーだろ?」
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