夜一を見たらわかること

「まだしてないんだ?」

そう言って、笑った。

「そう言えば、手繋ぐだけで恥ずかしがってたもんね」

「かかかっか関係ねーだろ?」

「そんな顔、彼氏より先に見れて良かったけど」

「なに言って……」

「そう言えばさ、この前のこと彼氏に言ったら困る?」

「はっ?」

「俺とキスしたこと」

「言うつもりなのかよ?」

「さあどうだろうね?」

その含み笑いのせいか、手の平で転がされてるみたいな感じになる。

同時に章吾に嫌われたくないって、やっぱり思った。

何、考えてるんだろう。さっぱり分からない。

夜一の顔からは、あたしのことをからかって遊びたいとしか読み取れなかった。

少しだけ、それを受け入れなきゃいけないかとも思ってしまうのは、あの日、「ごめん」って言えなかったからだ。

小四の夜一の顔があたしの心の中を駆け巡る。
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