夜一を見たらわかること
視線を再び外へ向けると、章吾が、校舎に続く階段を駆け上がっているところだった。
光が当たると少し赤っぽくなる彼の髪が風と戯れる。
急いで向かってくるその足先は、何処に向かっているか分かってた。足を急に止めたかと思うと、頭をあげるから見えないように慌てて机に突っ伏した。
「ああ」と言いながら、足をブラリブラリとブランコをこぐみたいに揺らす。
あたしは、章吾を待っていた。
「いるり、帰るぞ」
しばらくすると、廊下から声がした。振り返らなくても章吾だって分かった。
「おっせーぞ、章吾」
頬杖をついて軽く顎を向けた。文句タラタラ顔を作って。
「しょうがねーじゃん。
部活休むの部長に直接言わなきゃいけなかったからさ。
そんな怒んなよ」
「怒ってねーよ。
つうか、部活休んで大丈夫だったのかよ?
サッカー部って厳しいんだろ?」
「皮膚科って言っておいた」
机の間を通って、あたしの横に立つと得意気にそう言った。