夜一を見たらわかること
小さなテーブルの上にティーカップを二つ置く。白にバラみたいな花が描かれてる。
ルビー色が鮮やかで湯気がほんのりとたった。
「これなに?」
「ハイビスカスと……ローズなんとか。
肌にいいらしいって、母親が凝ってるだけ。
勝手に用意されてた」
「へー。
お母さんが好きなのか」
「酸っぱいかも。
蜂蜜いれる?」
そう言って、小さな白い容器を真ん中に置いた。
その隣にはクッキーの入ったお皿が並ぶ。これもお母さんの手作りと言った。仲がいいんだろうな、と思った。
「頂きまーす」
あたしがクッキーに手を伸ばすと、夜一がじっと見てた。
「あんだよ?」
「どうやって描こうかなって」
「見たまんまでいいだろ?
可愛く描けよ?」
「可愛くは無理だろう。男みたいだし」
ちょっとムッとしてしまう。
そりゃ、整形レベルに描かないと可愛くはならないかもしれないけど。
こんな口調だし。
薄緑のスケッチブックに手を伸ばす。1ページをめくって手が止まった。新品なのかもしれない。
そのまま、またじっとあたしを見た。