夜一を見たらわかること
「その言葉遣いやめて。可愛く話してよ」
「あっ?」
「したら、濱田さんでも可愛く描けそうな気がしてくる」
「はっ?
無理だっつうの!」
「だから、よく見たら可愛いなんて言われるんだよ」
胸がハッとした。
それは章吾があたしに言った告白の科白だ。
なんでそれを知っているんだって、頭が真っ白になった。
「もしかして聞いてたのかよ?」
「だって、保健室で寝てたら聞こえてきたから。
邪魔しないであげただけで偉いと思わない?」
「あの時いたのかよ」
「ちょっとカーテンの隙間から覗き見しちゃったけど。
濱田さん、顔真っ赤だったね。
〝あたしで良ければ〟とか言って」
「わっわっ! 言うな! もういい!」
「濱田さんはよく見なくても可愛いのにね」
そう言うと、視線を落として鉛筆で線を描き始める。
「そんな顔しないでよ」と、笑いながら顔をあげた。
「そんな顔って……」