夜一を見たらわかること
不思議な時間だった。
ポーズをつけるかと聞いても自然にしててと言うし。
あたしは結局、笑いもせずに真顔。
あたしは夜一を見て、夜一もあたしを見る。
描かれてるから当たり前なのに。
視線が静かに何度も交わる。
なんか触れられていないのに、くすぐったい。
あたしを描く、その線がそうさせてるような感覚。
夜一とうこうしているのが。
とってもくすぐったくて、我慢できなくなる。
「こっち、向いて」
でも俯いてもそう言われるから、結局夜一から顔を背くことが出来なかった。
「うまく描けてるかよ?」
「言葉」
「お上手に描けていらっしゃるのかしら?」
「不自然」
「うまく描けてるの?」
「どうだろ」
三回言い直しさせられたのに、返事はそれかと気が抜けた。また携帯が振動してた。章吾かもしれない。まだ返事をしてなかったから。