夜一を見たらわかること
「濱田さん、これ持ってって」
職員室の前の廊下で担任のともちゃんに声をかけられ待っていると、クラスの人数分の数学のノートを手渡された。
「はっ?」
「ついでに、これ持ってってよ」
「ふっざけんな!」
言い返すあたしに勝ち誇った笑顔を向けて職員室のドアを閉めた。だからメタボなんだよ、ともちゃん。
彼女のお腹のたるみの原因はここだと教えたくなった。
ニ階の職員室から渡り廊下を歩く。こんなことやってもなんの得にもならない。
あたしの腕からノートの束がヒョイと持ち上げられた。
「えっ?」
手が伸びて来た方向に顔を向けると、夜一が仏頂面でノートを持っていた。
「夜一?」
「何処まで?」
「教室まで」
「あっそう」
そう言うと、何も言わないでサッサと前を歩いて行った。
突然のことで呆気にとられて、足を動かすのを忘れた。