夜一を見たらわかること

なんかの気まぐれって思いながらも、少し嬉しい気がした。

普段の夜一は協調性という言葉を知らないみたいに、周りに興味がないように見えたからだ。

困ってる人なんか見つけようともきっとしない。

見つけても手伝うってイメージが湧かない。

あたしがその瞬間だけ、何故か特別に思えてしまった。

残りの数冊のノートを持って歩く。

その手は軽いはずで、息なんかあがらないのに、また胸にドキドキとくすぐったい気持ちが広がって来た。

教室に行くと、机の上にノートが置かれてあった。

「ありがと」

椅子に腰かけながら斜め後ろの夜一に一応の御礼を言う。

机の中から教科書を取り出してる彼は上目使いであたしを見て、また視線を下げただけだった。

シカトされると、冷たいのか優しいのかよく分からない。

教室の中だと話したくないのかな。

二人のときは話すくせに。
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