夜一を見たらわかること
「そんなこと知ってる」
あたしの頭に手をおいて、ポンポンと叩いた。
これだけ身長差があるから置きやすそうだけど。
なんか今日は夜一が穏やかに見える。やっぱり外にいると気分が変わるのかもしれない。
今日はキスなんかされないって少し安心した。
「夜一も、あとでやろーね!」
振り返って笑うと、夜一は小さく頷いた。
とか言って、持ってきたのはほとんど二人用の物ばかり。仕方なくスケボーでもやろうと足を乗せてチクタクする。
夜一は芝生に座って、あたしじゃない何かを見てスケッチしてた。
もしかして、あたし今日来なくても良かったのかな。
そんな気がしてならない。
ふっと思いだす。小学生の夜一が、「いるりちゃんの名前ってさ面白いんだね」と得意気にあたしの名前を呼んでた日のことを。
濱田さん。なんて、あたしは未だに慣れない。
それがとても嫌だと思ってるのはなんでだろう。