夜一を見たらわかること

「何もないと思ってないよ」

これでからかうことも出来ないだろうって少し強気になった。あたしの背中に回っていた夜一の腕が緩んだ。

案の定、面白くないと思ったに違いない。

そっと上目遣いで見上げた。どんな顔してるんだろうって。

だけど、夜一の頬がさっきより紅潮して見えただけだった。カーテンの隙間からさす陽のせいでくっきりと色が強調されたのかな。

「夜一?」

「本気でそう思ってる?」

「うん」

笑ってみせると、何故かそこで溜め息をつかれた。困ったように。表情がグンと切なさに色を落とす。

「じゃあしていい?」

「何を?」

「分かるでしょ?」

「えっ?」

目が本気だった。あたしをただ真っ直ぐ見詰めるから。なら言葉も一緒なのかと思った。

「何言ってんの夜一?
分かんないよ?」

あたしのデニムのスカートの中にある太ももに夜一の手が触れると、同時に唇を頬に預けた。

「んっ……」

もう片方の腕はあたしの背中を支えるようにしてる。だけど、このまま押し倒されてしまいそうだと思った。

「夜一、やめてよ? やっ…」

「ムリ」

「……なんでそんな意地悪するの?」

「さっき、うんって言ったでしょ?」

「でも、それは……」

「途中で止めるとかムリだから」

夜一の顔が近付くと、ブレてはっきり見えなくなる。

そのまま目をつむってしまった。
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