夜一を見たらわかること
「お前さ、前日に誕生日教えるってないだろ?」
校門を出ると、地下鉄の駅前のバスロータリーを目指して歩く。隣で章吾がぶつぶつ文句を口にする。
「わりぃ。言うことでもないと思って」
「いいけどさー。何処か行きたいとこある?」
「んーっ」
どうしよう。行きたいとこなんか浮かばない。
「なんでもいい」
「なんだよそれ」
「だって思い浮かばねーんだもん。そこの公園で良くね?」
駅前の公園を指さす。小さな子供がはしゃいでるのが見えた。
「やる気ないな、お前」
「誕生日ってやる気がでるのかよ?」
「そういうんじゃなくてさ」
章吾は苦笑いをしたけど、あたしの手を引っ張った。
初めて手を繋いで、ドキッとした。
だって、付き合ってるけど、章吾とはまだ友達みたいだから。
話すこともすることも、友達のときと何も変わらない。
それ以上のことをするのが想像つかない。