夜一を見たらわかること
confess
「章吾くんと別れるなんて意味分からんし」
休み時間、文鎮や硯を机の上に並べながら別れ話を祢音に報告すると、不思議な顔をされた。
「友達としか思えなかった」
「まじで?
可哀そう。章吾くーん。
いるりは悪魔だ。
小悪魔。まさかの大悪魔?」
「悪いと思ってるよ」
「ははは。まあ、いんじゃない?
そういうこともあるよ。
付き合ってみたら違かったとか。
うん、よくある。よくある」
あたしを責めたと思ったら今度はあっけらかんと笑った。
夜一はこんな祢音のことが好きなんだ。
選択教科を書道にしたのは、書道部の祢音と同じクラスになれるから。
そういうことだろうか。
納得は出来るけど。
チャイムが鳴った。
「日直!黒板消せ!黒板!」
教室に入るなり、書道の先生が言う。しまった、日直はあたしだったと慌てて黒板を埋めていた年号やら人名を消していく。
振り返ると、夜一の席に誰も座っていないことに気が付いた。
朝いたはずなのに。横にかけてある鞄もない。
先生が独り言みたいに「多岐川、早退か」と言うのが聞こえた。
具合でも悪かったのかな。