夜一を見たらわかること

硯に墨汁をいれて墨をすった。

後ろに夜一がいないはずなのに、あたしはまた今日も集中出来なかった。

また夜一のこと、考えているから。

そこにいてもいなくても夜一を意識してるんだ。

なんでなんだろう。

気になって仕方ないんだ。今、何処にいるんだろう。なんで帰ったんだろう。

濃くなりすぎた墨汁にまた、水を入れた。

半紙に左手をそえて押さえた。

硯で先を整えたはずの筆。

そこからポタリと墨が落ちた。

じわじわと滲みながら広がる点を見て、涙かと思った。

んなわけないのに。

「水入れすぎた」

そうか。

あたしが哀しいから涙なのか。

夜一が祢音のことが好きで。

あたしのことが嫌いなことが。

視力までおかしくさせてる。


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