夜一を見たらわかること
その日の放課後、日誌を片手に職員室へ向かった。珍しく担任のともちゃんがお茶をすすってた。
「ともちゃん、日誌」
「あら。ちゃんと書いた?」
「あったりめーだろ」
「濱田さん、雑だもの」
細かい性格のともちゃんが、目の前でパラパラとページをめくると、「早退…多岐川くん抜けてるわね」と早退の箇所に名前を記入した。
「なあ。多岐川くんなんで早退したの?」
「えっ?
ああ、お家の事情でちょっとね」
言葉を濁すから、ドキッとした。あたしの頭に浮かんだのは仲良さそうな家族の姿。
「家の事情って……お母さん……とかじゃねーよな?」
「あら?知ってたの?」
ならなんで訊くんだと言うような顔になる。
「危篤らしいわね」
「危篤?」
あたしが聞き返そうとすると、後ろの席の先生に「お電話です」と声をかけられてしまってそれ以上、訊くことが出来なかった。