夜一を見たらわかること



お母さんが危篤という言葉が頭の中にずっとある。

土曜日を通り過ぎて日曜日になってもそれは変わらなかった。

どうしても思い出してしまうことがある。

小学生の頃の夜一。

いつも何処か寂しげな姿が印象的だった。

自分から率先して何かをやるわけじゃないし、ひとりでいるところばかりを見ていたせいかもしれない。

だけど、寂しく見えるのは、そのせいだけじゃなかった。

たぶん、本当に夜一は寂しかったんだ。

毎日、毎日寂しかったんだ。

近所を歩いてると、絵を描いてる夜一を何度か見かけた。

公園のベンチにチョコンと座ってたり、空き地にしゃがんでいたり。

その度、気になって声をかけた。絵だって見せて貰った。

その絵は、空だったり。花だったり。猫だったり。

日常の何気ない何かを。夜一の目がうつした何かを色鮮やかに切り取って描かれてた。

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