夜一を見たらわかること
辺りを見るけど、電信柱にはお葬式の案内みたいなのも貼られていない。
喪服の人もいない。
大丈夫だったのかもしれない。
案の定、夜一の家に着くと、前来たときと何も変わらなかった。
呼び鈴を鳴らすと、出てきたのは女の人だった。大きな二重瞼が垂れる。
危篤じゃなかったのか?って声には出せなかったけど、困惑した。
「あっ……あの。同じクラスの濱田ですが、夜一くんいますか?」
「夜一?今出掛けてるのよ。ごめんなさいね」
「そうですか」
真っ白な肌は陶器みたい。声を聞いたり遠くにいるのを見たことはあるけれど。
この人は、きっと。
「あの……具合大丈夫なんですか?」
「具合?」
「先生にお母さんが…危篤だって聞いたんですけど。
それで心配で」
目を丸くしたあと、ふっと笑みを浮かべた。
「危篤……。
ああ。おばあちゃんのことね」
「えっ?」
「なんか間違って伝えられたみたいね?
祖母が危篤でって言ったのに」
苦笑いをする。