夜一を見たらわかること

「おばあさんですか?」

「ええ。
でも、不思議なことに病院に行ったら持ち越したの。
大丈夫だったの。
そういうこともあるのね」

優しい微笑みを向けられた。

「そうすか」

「わざわざ心配して来てくれたの?
ありがとね」

ブンブンとかぶりを振った。御礼を言われること等していない。

トタトタ足音が聞こえてきて、お母さんの横から顔を出した男の子。丸い大きな瞳はきっとお母さん譲り。

夜一に似てない弟だった。

「ママ、だぁれ?」

「お兄ちゃんのお友達。
ほら、ご挨拶して」

「こんにちは」

「こんにちは」

挨拶を返すと照れ臭そうに笑った。腰を屈めて、目線を合わせる。

「挨拶上手だね」

そう言うと、頷いた。その小さな手にはクレヨンが握られていた。

「色塗りしてたのか?」

「ううん、絵描いてたんだ」

「絵描くの好きなのか?」

「うん。
お兄ちゃんに上手って言われる。怪獣。
お兄ちゃんはね、女の人の絵が上手なの」

「女の人?」

「うん。いっぱい描いてあるんだよ?」

「いっぱい描いてるんだ」
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