夜一を見たらわかること
「夜一……」
眉間にしわを作って不機嫌そうな顔。
だけど、そのまま黙ってあたしの手を引っ張った。
何処まで行くんだろうと思うと、道路の真ん中で足を止めた。
「なに言ってんだよ?」
「ご……ごめん。
なんか御礼言いたくなって」
「御礼?」
「夜一を幸せにしてくれた御礼」
夜一は深い溜め息をつくと、あたしを睨みながら言った。
「濱田さんって何考えてるか、本当に分からない」
夜一は掴んでいた手を離した。
「はっ?」
「掻き回してばかり」
「なんだよ?」
「あんなこと言われたのに、平気で来るし。
俺に家族を作ってくれてありがとうとか、平気で言うし。わけ分かんない。
俺のこと、嫌いなくせに」
哀しげな視線は、あたしの手元で止まった。
夜一のこと嫌いなわけないのに。
「夜一、ごめん」
頭を深く下げた。丸めた絵を差し出しながら。