夜一を見たらわかること
無言のまま絵を広げた夜一の手が見える。今、何を思ってるんだろう。
「あたし、夜一の絵、好きだったんだ。絵を描いてる楽しそうな夜一も。
だから、あたしね。
夜一のお母さんの絵が見たかったんだ」
「見たかったって?」
「夜一。
画家になりたいって作文で言ってたじゃんか?
大好きなお母さんが夜一の絵が好きだから喜ばせるような画家になりたいって。
すごい嬉しそうな顔で発表してたから。
そんな夜一のお母さんの顔が見たかった」
「……」
「だって、夜一のお母さん、ずっと入院してたろ?
あたし一度も見たことなかったもん。
近所に住んでるのに一度も見たことないもん。
だから、夜一の大好きなお母さんの顔、絵でもいいから見たかったんだ。
なんか分かんねーけど、すげー見たかったんだ」
「これだけの為に来たの?」
冷静な声に、思わず顔をあげてしまった。
「こ……これだけって?
だって、大切な絵だろ?」
「そうだけど。
絵なんか学校でも渡せるでしょ?
なんでこうやって家に来れるの?
彼氏がいるのに、普通来る?」
「彼氏とは別れた」
「なんで?」
「友達だって気付いたから」
「ふうん。じゃあ、なんで今ここにいるの?」
「……日曜日だから?」