夜一を見たらわかること
「小学四年生。
放課後、俺の絵をランドセルに詰め込んでる女の子が教室にいるのを見た。
普段入れない教科書もすごい勢いで詰め込んでて。
物を持つのが嫌いな変な子だったんだけどさ」
「……うん」
「俺、その絵を隠した女の子のことが好きだった」
「えっ?」
「いつも、バカにしてくるのに。
絵を描いてるときは、いつも話しかけてきてくれて褒めてくれる女の子だった。
すごいショックだった。
その子に嫌われてたなんて思わなかったから。
だから、泣いた」
「それって……」
あたしのこと?
でも、名前を出さない。
まるで別の人、あたし以外の誰かのことを言ってるみたいだ。
「だから、高校入ってその女の子と再会したときは驚いた。
声なんかかけれなかった。
それなのに、話したいってずっと思ってた」
「……」
「保健室で、その女の子が告られてるとこたまたま見た。
恥ずかしがってる顔が、すごい可愛くて。
目の前で彼氏が出来たっていうのに、その瞬間、またその子のこと、好きになった」
「うん」
「だから、その子が俺の絵のモデルになりたいなんて言ってくれて嬉しかったし。
正直少し、期待した。
だけど、彼氏いるし。
しかも、彼氏とキスしたところを見て、勝てるわけないって思って諦めようとしてた」