夜一を見たらわかること
視線を先に外したのは夜一だった。
代わりに、章吾が歩いて行った方へと向けられる。
それから、その横顔は微笑したように見えた。
何考えてるんだろう。そう思った。早く帰ればいいのに。
視界にいれるのが嫌で、わざと足元を見た。
ハートが三つ繋がった緑の雑草が揺れてて、引っこ抜きたくなる。
「キス」
夜一の声がして、体がピクリと止まってしまう。
目線をあげても顔が見えなくて、恐る恐る顔をあげた。
「したくないの?」
真顔であたしにそう言う。
夜一の声を聞くのは何年ぶりだろう。そう思ったけど、数えなかった。
ただ驚く程、低くなっている。
だけど、言われてることの内容があたしには理解が出来なった。
「えっ?」
「わざと話逸らしてたから」
「なっ……何見てんだよ?」
スッと口を閉ざして、視線をまた逸らす。何か勿体ぶってるようにも見えて、あたしはドキドキしてしまった。