夜一を見たらわかること

「んっ……」

少しの酸素不足。それが気持ちいいなんて、まったくあたしどうにかしちゃったかもしれない。

「すぐ声だす」

唇を離すと、頭をポンポンと叩いて小馬鹿にしたように笑った。

「だって!」

「誰にも見せないから、いいけど」

そう言って、体を反転させた。

「ちょっと待てよ!」

先にもう帰るってことかよ!

キスしといて。

ここでサヨナラ?

だけど、空いてる夜一の後ろ手が。

まるで「繋ごう」って誘ってるみたいに揺れる。

そっと上から触れてみた。

ギュッとされて、繋がった。

夜一の耳たぶが少し夕焼け色に染まる。

顔を見せたくない理由もこうして感じとれる。

夜一を見たらわかること。

「好き」

その背中に言ってみた。



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