夕暮れにさよなら。
もう風が少し冷たくて、"もうすぐ冬がやってくる"そんなこと思いながら、私はさっきの先輩のように窓の外のグラウンドを見つめていた。
先輩はどんな想いで、どんな気持ちで、もうここにはいない人の面影を、この窓から探しているのだろうか。
「...もしさ...」
そう聞こえて、私は視線を先輩へと移した。
「...もし、自分の好きな人がさ、遠くに行ってしまうとしたら、橘はどうする?」
「.....」
「..その人には恋人もいて..けど、泣いてるんだ」
そう言って、私の言葉を待つように、じっと私を見つめる先輩の瞳には、やっぱり私なんて見えていないんじゃないかと思った。